夏山シーズン前のトレーニング ~トレーニングプログラム編~

前回掲載いたしました、『夏山シーズン前のトレーニング ~まずは原則のお話編~』を受けて、トレーニングプログラム例をご紹介したいと思います。
前回のお話でも触れましたが、トレーニングをする時に大切な3原則として、『過負荷の原則』『漸進性の原則』『特異性の原則』が挙げられます。これらの原則を取り入れながら、ある女性(中井さん<仮名>)が、友人に誘われた富士登山ツアー参加へ必要な体力をつけるまでの過程をご覧ください。
まずは中井さんのプロフィールをご紹介いたします。
名前
性別
年齢
運動歴
登山歴
体格
体力
目標
:中井さん(仮名)
:女性
:63歳
:中学生や高校生の時に部活動をしていたが、
 社会人になってからはあまり運動をしていない。
:30年程前に1000m以下の山に登った。
:身長158cm、体重52kg
:ここ何十年か2km以上歩いたことが無い。
:富士山を登頂する。
ここで、富士山を体力的に余裕を持って登頂するためには、『ザックに10kg の荷物を背負い、4kmを1時間で休憩せず歩くことができる』能力が必要です。ですので、トレーニング目標はこれがゴールです。
中井さんは友人に誘われ、8月25日に富士山ツアーに参加することになっていますので、今の体力レベルから1カ月で仕上げることが求められます。
いきなり、目標だけを見ていては頑張り方がわからないので、小目標をたてていくことにします。
小目標①2kmを30分で休憩せず歩く
小目標②3kmを45分で休憩せず歩く
小目標③4kmを1時間で休憩せず歩く
小目標④ザックに5kg の荷物を背負い、4kmを1時間で休憩せず歩く
目標 ザックに10kg の荷物を背負い、4kmを1時間で休憩せず歩く
それでは、トレーニング開始です!
<DAY1、7月22日>
中井さんは2km 歩くことにしました。ゆっくり休憩を入れながら1時間かけて歩きました。こんなに歩いたのは久しぶりなのでやはり疲れました。
<DAY2、7月26日>
中井さんは1日目歩いた筋肉痛がなかなか取れず、3日間お休みしました。今回も2km歩くことにしました。休憩は入れましたが少しペースを上げることができ、45分で歩ききることができました。
<DAY3、7月29日>
やはり筋肉痛になりましたが、1日目よりはだいぶマシです。今回は休憩無し(水分補給はします)で2kmを歩ききろうと中井さんは意気込みました。中井さん28分で歩ききることができ、大幅なタイム更新に喜びました。小目標①クリアです。
<DAY4、8月1日>
筋肉痛にはなりませんでしたが、ペースを大幅にあげたせいか若干疲労感が残ったので、2日間のインターバルをとりました。
さて、これから中井さんは3kmの距離に挑戦します。まずはあまり無理せずゆっくりなペースであることにしました。その結果55分で余裕を残して歩ききることができました。
<DAY5、8月4日>
距離を伸ばしたせいか、筋肉痛になったので、2日間休んで、再チャレンジです。見事44分で3kmを歩ききることができ、小目標②をクリアしました。
<DAY6、8月6日>
筋肉痛にもならず、特に疲労感もなかったので、いよいよ4kmに挑戦です。まずはゆっくりと足馴らしの感覚で歩きました。1時間10分で歩ききることができたので、次は1時間に挑戦できそうです。
<DAY7、8月9日>
やはり距離を伸ばしたので筋肉痛になりました。2日間休んで4kmに挑みます。余裕を残しつつ58分で歩ききることができました。小目標③クリアです。
<DAY8、8月11日>
中井さんはいよいよザックに5kgの荷物を背負って歩きます。これまでも、ザックの中にプラティパス(超軽量水分補給ボトル)を入れて歩いていましたから無負荷ではなかったのですが、そこに5kgを加えるとやはりずっしりします。まずは足馴らしということで、ゆっくり目のペースで歩き、1時間10分で歩けましたが、足裏や膝に疲労を感じました。
<DAY9、8月14日>
足裏と膝の疲労が抜けなかったので、2日間のインターバルをとりました。あまり記録更新にはこだわらず、自分のペースで歩くことにしました。その結果1時間2分で歩くことができ、これなら次はいけそうだと中井さんは思いました。
<DAY10、8月16日>
それほど疲労が後に残ることはなかったので、すぐ歩きたいという気持ちが芽生えましたが、1日休みをとることにしました。中井さんは意気揚々とザックをかつぎ、軽やかな足取りで歩き始めました。その結果4kmを56分で歩ききることができ、小目標④をクリアしました。
<DAY11、8月19日>
疲労感はあまりなかったですが、家の用事などが重なり、2日休むことになりました。今回はさらに5kg 増やして、10kg の荷物を持って4kmの道のりを歩きます。中井さんは1時間で歩ききる自信がありましたが、無理せず、時間を気にしないで歩くことにしました。その結果1時間5分で歩ききることができました。ゴールはすぐそこです。
<DAY12、8月21日>
1日の休みを挟んで、中井さんはいよいよ目標に挑戦です。とても暑い日で水分補給をたくさんしましたが、足取りは軽いです。荷物が10kg に増えたことを感じさせないぐらい、バランス良くスムーズに歩くことができました。その結果55分で歩ききることができ、目標をクリアしました。これで富士山ツアーに参加するための準備ができました。中井さんは富士登山が待ちきれません。
<DAY13、8月23日>
目標はクリアしましたが、この体力をキープするためにもう一度同じ条件で歩くことにしました。本番が近付いているので、あくまでも無理せず。中井さんは時計を気にせず、自分のペースで歩きましたが、結果は55分でした。前回よりも余裕をもって歩くことができ、中井さんは自分のパフォーマンスに満足しました。
<8月25日~26日 富士登山当日>
いよいよ待ちに待った富士登山の日です。中井さんは食事も睡眠もしっかりとり、体調は万全です。高山病の心配はありましたが、体力的に余裕があったので、呼吸を意識することで避けることができました。おおいに景観を楽しみながら軽やかな足取りで登りました。
2日目には運よく御来光を拝むことができ、山頂に到達して感動をかみしめました。多少疲労感はありましたが無事下山することができました。
中井さんはこれを機に色々な山に登ってみたいと思いました。
            
今回は体力レベルがかなり低い方が、1カ月で富士山を登頂するための体力をつけるというプログラムでした。あくまで一例ですのでこの通りというわけにはいきませんが、『無理せず、少しずつ負荷を増やしていく。適切に回復期間をとる。』ことで、確実に体力レベルは向上していきます。
今回は休養や栄養面には言及しませんでしたが、トレーニングと休養・栄養は両輪なので、どちらが欠けても効果は多く望めません。しっかりと計画されたトレーニングとバランスのとれた栄養、適切な睡眠時間を含む休養が大切です。
さぁ、今日から登山の為のトレーニングを始めていきましょう!
          
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